ブランド力の高いスターバックスは広告を打っていない?『ブランドづくりの教科書』

PR代行を頼む意義

先月から友人御夫婦のジュエリー会社のPRを任せてもらえることになった。

こちらからの申し出で無償とはいえ、本業に関わるのであるから真剣なビジネスの付き合いである。

なんとか体裁を整えてお二人と面談をする中で、PR代行業務は「ブランド」の視点が欠かせないことに気がついた。

お客様の会社が、もしくは商品が、どんな「ブランド」を目指しているのかが理解できないと、PRの打ち出しようがないし、極論を言ってしまえば、PRする意味がないのではないかと感じた。

曖昧なままで方々に認知を広げても、受け取った側は自由に抱いてよいはずのブランドイメージさえも持つことができない。せっかくのPRが意味の持たない発信になってしまうのである。

つまり、PRをするということは、周りに会社や商品の認知を図る事務作業だけを指すのではなく、そこに会社や商品に対してのお客様自身の検証が含まれているのである。

PR業務を人に託す意義は、実は、掘り下げ作業を伴走してもらえるところにあるのだと思う。

忙しく本業を抱えながら、優先順位を上げてこの作業に取り組むことは至難である。

PR代行業務を文字通りの委託業務と捉えず、「月1回の深掘り作業のコーチング」として利用すると、月1回のプレスリリース発信が叶うだけでなく、自然とブランド力を高める機会になっていくのであろう。

広告宣伝費をかけないスターバックスのやり方

そんなことを考えながら、岩崎邦彦『ちいさな会社を強くするブランドつくりの教科書』(日本経済新聞出版社、2013)を読んだ。

大学教授である著者の関わったトマト販売を中心に、ブランドのつくり方を一から丁寧にまとめた本である。

一番の印象に残ったことは、トマトでなくて申し訳ないがスターバックスのブランド戦略である。

日本進出の際、スターバックスは、広告宣伝費をかけず、新聞記事で信頼を得て成功を推し進めたという。メディアへの掲載が、顧客の認知に、さらには、口コミやSNSの発信へと繋がってブランド力を高めたのである。

また、著者の解く、シンボルを持つ強みも理解できた。

カルビーといえば、ポテトチップス。

ポテトチップスといえば、カルビー。

マヨネーズ=キューピー、テーマパーク=ディズニーランドといった具合に、会社とシンボル(象徴される商品)が結びつくブランド力は確かに強そうである。

商品を引き算して、尖らせることによって人の目を引くことができるという。

このようなブランドの側面からの学びを通じて、PR代行業務は、プレスリリースの作成・発信をするだけの紙一枚の世界の仕事でないことが十二分に理解できた。

ブランド力を高める提案をするなど、関わる会社が成果を出していくための仕事のやり方はまだまだ無限にありそうである。

PRの可能性の幅が広がり、浮き立つような気分だけでなく、迷宮に入ったような張り詰めた気分を味わっている、起業前のつぶやきである。

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