ジェントル・UBさん

7年前の春、大学院の教室でUさんと出会った。

当時のUBさんは確か70代半ば。
謙虚で控えめな男性、という印象だった。

お互い社会人学生としてのチャレンジで、意気投合した。

あとから知ったのだが、UBさんは海外出張に飛び回る多忙な経営者でもあった。

全く偉ぶることがなくお洒落で、本物のジェントルマンが日本にもいたのか!と感心した。


学問に対しては厳しく、真摯な研究姿勢を貫いていた。

堅実なUBさんだが、なぜか私のことを気にかけ、いつも応援をしてくれた。

UBさんの娘さんが私と同世代で、名前が同じ“智子”であり、より親近感が湧いたのかもしれない。

コロナの感染の最中、私もUさんも大学院を退学することにした。

UBさんは論文を仕上げるため自宅で研究を続けている。
しかし、お会いする機会と場がなくなった。

それでもUBさんからはこれまでと変わらず、時候の挨拶や美味しいものが届く。

9月末、私が退職した日には大きな胡蝶蘭が届いた。

見たこともないほど大きい段ボール箱に収められていた。

定年退職でも、なにかをやり遂げた故の退職でもないのに、節目を一緒にお祝いしてくれるウラベさんの人間性に感動を覚えた。

私が広報PRの仕事で起業することを言ってはいなかった。

ところで昨晩は、北斎の絵柄のクッキー缶を受け取った。

胡蝶蘭も綺麗に咲き続けている。

私はUBさんになにをプレゼントできるのだろう。

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