迷ったら危険な道へ進もう!岡本太郎『自分の中に毒を持て』

「芸術は爆発だ!」とテレビ画面に乗り出し、目を見開いて吠える岡本太郎(1911-1996)。

・いじられキャラの芸術家のおじいさん
・太陽の塔の人
   
とこれまで私は岡本太郎についてそんな印象しか持ち合わせていなかった。

しかし、岡本太郎はそんな甘っちょろいキャラクターでは全くない。岡本太郎『自分の中に毒を持て』新装版(青春出版社、2002)の著者の言説は、明治44年生まれの日本人の思考とは思えない、斬新で鋭いものであった。

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「間違いない道」はうんざり

太郎は、世間に従って無難に生きることを毛嫌いする。

そのような生き方は惰性だと叱咤する。

そして太郎は言う、「運命を爆発させるのだ」と。

この道一筋、ただ自分の職能だけに精進すれば尊敬もされる、報われもする。~略~しかし、社会の分業化された狭いシステムの中に自分をとじ込め、安全に、間違いない生き方をすることがほんとうであるのかどうか、若いぼくの心につきつけられた強烈な疑問だった。

第一章 意外な発想を持たないとあなたの価値は出ない‐自分の大間違い‐(18頁)

太郎は世間と対峙し続け、自分の信念を貫いた。自分が行きたい道、つまり危険だと思う道でいかに挑戦するかが太郎の人生の指針なのであった。結果もうまくいかないほうが一層面白いのだという。

現代の私たちでさえ、そのような考えを持つものは少なく、口にするだけで気が触れたと思われかねない。

まして、なかなか行動に移せないことの方が多い。

それを明治生まれのおじいさんが、先陣を切って行動してくれていたことに私は感動を覚えた。

   

三日坊主という計画を立てろ!?

   

ギター、スポーツクラブ、英会話、編み物、日記、ブログ、アメブロ、note、動画編集と、私はぱっと思い出すだけでもこれだけのものに興味を持ち、手を付け、三日坊主で見切りをつけてきた。

私としては「無念」と言うしかない触れたくない過去だが、太郎はそれを認めてくれた。

 さまざまなバリエーションで自分の運命を試すという“計画”を持つことになる。その方が、面白いじゃないか。

 ぼくは、昔から三日坊主でかまわない、その瞬間にすべてを賭けろ、という主義なんだ。だから、三日坊主になるという“計画”を持ったっていいと思う。

第一章 意外な発想を持たないとあなたの価値は出ない‐“捨てる主義”のすすめ‐50頁

今この瞬間にやるべきことに体当たりし、いずれやると言って現実から逃げることの方を太郎は非難しているのである。

無我夢中で進んでいこうと勇気づけられた次第である。

   

行き詰まることが面白い?

   

何も芸術家や文学者だけが行きづまっているわけじゃない。

第一章 意外な発想を持たないとあなたの価値は出ない‐エゴ人間のしあわせ感覚‐75頁

太郎も度々行き詰まっていたという。

いわんや、私も行き詰まり人生である。高校2年生の春、初めて地の底まで落ちた感覚に陥り、丸2日学校を休んだ。職員室から同級生が笑いながら自宅に電話をかけてきた。後ろには先生の気配がある。

「家で何してるの~?」

あまりに次元の違う世界に触れ、我に返った。私以外の皆がこの社会に適応して生きている、ただそれだけで世界は素晴らしいと思えた。

と同時に、人間のたくましさに恐れ入った。

私の心のなんと貧弱で滑稽なことよ。一筋の光明が差し、私は這い上がることができた。

独りぼっちでも社会の中の自分であることには変わりない。その社会は矛盾だらけなのだから、その中に生きる以上は、矛盾の中に自分を徹する以外にないじゃないか。

第2章 個性は出し方 薬になるか毒になるか‐道は一本か、十本か‐(104頁)

まさに、太郎の言うとおり、人生は制約の中でこそ、自分を明らめて行動するのである。すでに心に毒はある。迷ったら危険な道へ進もう。

岡本太郎が背中を押してくれている。

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