2024年10月1日、青山ブックセンターで行われた『文章は「転」。』(近藤康太郎氏/フォレスト出版)新刊記念イベントに参加した。
料金は1,650円。
近藤氏は朝日新聞の記者である。私は、紙面を通じて出会った。
九州で記者の傍らに行う”狩猟”や”稲作”の営みを痛快に語る連載「アロハシリーズ」、週替わりでベテラン記者が攻め込むコラム「多事奏論」が有名だ。
初めて近藤氏を知ったとき「なんじゃこの方は?」
三大新聞の社員かと疑念が湧きつつも、羨ましく思った記憶がある。
『文章は「転」。』について
書籍は、イベント当日に青山ブックセンターで買い求めた。
小説だったならば講演に備えて読み終えたであろうが、今回は「文章本」。
近藤氏のことだから、本の内容に深く切り込むというよりもっと違った視点で話が展開するだろうと踏んだから。
あとはささやかなものだが、イベントを企画した書店にお金を落としたいという気持ちもあった。
いつもなら道草をしてギリギリに飛び込む。しかし、書店イベント。店内の雰囲気、そして書棚に並んだ本をゆっくりと見て回りたかったので大分、早くに到着した。
サインをもらう
せっかく早くに着いたのだから「見やすい席にしよう」という欲が湧く。書棚で見かけて欲しくなった本のタイトルを忘れないように何度も反芻しながらイベント会場に進んだ。一列目の正面を避け、二列目の正面に腰かけた。
入口脇にパラパラと並んでいる人の姿が見えた。
後ろの席の、私よりちょっと若い印象の女性に尋ねると(誰にでも気になることは聞ける質)、講演前後に「サイン会」をする構成らしい。
せっかくなので行ってきます、と彼女にお礼を言ってパラパラとした列の後ろに立った。
衝撃。
テンガロンハットにサングラスにアロハシャツ。足元は白いスニーカー。丁寧に腰をかけるように勧めてくる。
当たり前だが、私が仕事で出会うような新聞記者の姿ではない。コラム記事に添えられたあの写真は日常の姿だったのだ!
いつも紙面を楽しみにしています、と口火を切る。新聞を読むなんて珍しいね、なんて一応褒められた。
「アロハ?たじ?」と尋ねられ、焦った私は「アロハです」と答えた。失態。
田んぼ仕事を「田事(たじ)」と呼ぶのかと勘違い。コラム「多事(たじ)奏論」が私は大好きなのに嘘をついてしまった。
なぜ、著者に会いに行くのか?
ところで私は著者イベントを好む。
一番初めに行ったのが、大学生の時の大江健三郎氏。いや、子どもの時の黒柳徹子さん!あれは『窓際のトットちゃん』の独演会だったのかな。
興味が湧くと、どんな人だろうと好奇心が湧く。一度はこの目で姿を拝みたい、存在を確かめたいという欲だ。そういう意味では、音楽もそう。好きなミュージシャンのライブは割と行く方だと思う。
会ったことのない著者がほとんどだが、パッと思い出せるだけで町田康、島田雅彦、江國香織、村上龍、谷川俊太郎、中島義道、武田邦彦など(敬称略)をこの目に収めた。私にとっては人生一度きりの出会いである。
歌人の穂村弘さんは、担当した文学賞の表彰式に出席されていたので役得。心のうちで興奮しながら遠巻きで眺めた。
さて、講演会である。
近藤氏は想定した以上に突き抜けたお方だった。見かけ通りといえるかもしれない。
ファシリテーターはハイセンスなカルチャー雑誌「Pen」編集部の方。
(ちなみに『Pen』私が学生の時に創刊され、シンプルな装丁にビビットなタイトルを目の当たりにしてこんなお洒落な文化的嗜好の方々がいるのね、と憧れて読んでいた雑誌)
で、その編集者さん、いらっしゃらなくて良かったのでは?と私が申し訳なく思うぐらい、近藤氏はサービス精神に溢れ、キャラクターを炸裂させて独走していた。
文章を書くことためのインプットを「アスリート」になぞらえ、日々トレーニングを重ねているだけあって近藤さんの話す材料は無限大なのだ。
芸術、アメリカ駐在、音楽、幼少期と話がコロコロと変わっていった。決して流暢な話しぶりではないのに映像で思い描ける話術に引き込まれた。
以下は私のメモ。
<おススメ>
・人生のチャンネルを増やすこと
・たくさん遊ぶこと(音楽、文学、舞台、映画など芸術の意)
・芸術文化は時代を写さざるを得ない
<書くことについて>
・どこかで笑わせたい
・書くことは客観視
・自分と他者を生きやすくするために書く
共感と、影響と。
氏の提唱されている4つのジャンルの並行読書、意識的にできるかな?
帰りがけに欲しかったはずの書名を忘れたことを思い出す。上掛けも座席に忘れたことに気づき、再び店内に戻り、2つの用を済ませて家路を急いだ。
●ちなみに新刊の購入者限定企画で近藤氏の薦める「ポピュラー音楽リスト」(200作品の解説)のPDFファイルがもらえます。まさにアスリートメニュー!※最後のQRコードのページ
(以上、駄文のイベントレポ、おわり)