一冊だけのつもりが……



およそ20年前、
《詩のボクシング》に夢中だった。

リング上で即興の詩を掛け合う言葉の競技である。

並行して、
作家の島田雅彦さんのファンになった。


リング上では、
滑舌よく、淀みなく、膨大な量の言葉を相手に浴びせていた。

圧倒的だった。


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小説の世界でも
理路整然としながらも、
その世界観は突拍子もない。

手に取る本は全て印象深かった。
印象というより、むしろ、強烈の方が相応しい。


穴を掘る話とか、穴を掘る話とか……。
理解は全く不能だが、魅力的だった。

8年前に進んだ大学院では
在籍した研究科の教授としてそこにいた。

学問と芸術の世界をバランスよく行き来することができるのだ。


ただ、彼の多くの本に目を通していた訳ではない。
 


コロナ禍に通じる“世界の混乱”を描いているらしい、4年前に刊行された
『カタストロフ・マニア』を読んでみようと通販サイトを開いた。



つい、欲張って多くの本を注文してしまった。

数日後、宅配業者から受け取った包みを開けた。

どの本が一番に読みたかった本だったのか一瞬、分からなかった。


読書の時間よりもたくさんの“目玉”が欲しい今日この頃である。


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