15才のブラン。
5日前から、歩けなくなった。
ブランの居場所を、外の小屋からリビングに変えた。
毛布をかけて眠る姿は人間そのもの。
寝返りを手伝ったり、水を口に含ませたり介護が必要になった。
私は、そもそも動物が苦手だ。
夫の、「犬を飼うことが子どもの頃からの夢だった」という話を聞き、私はそれを受け入れた。
二人でペットショップへ犬を買いに行った。
愛くるしい犬が並ぶ雰囲気に馴染めなかった私は、夫の袖を引っ張り自宅へ戻った。
そのすぐあと、私は〈犬、譲ります〉という貼り紙を見つけた。
精神的に辛い時期の夫を支えていたブラン。
夫の長期入院でひとりになった私を支えたブラン。
3人の子どもたちの成長を優しく見守るブラン。
そもそも、私は動物が好きではない。
そんなことはもういい。
ブランはもう歩かないのだ。
人間のように静かに眠るブラン。
時々、目を開ける。
私はなぜだか涙が止まらない。