いわゆる「半ドン」があったころの話である。
私が子どもの頃、
土曜日の午後は幸せに満ちた時間だった。
土曜日だけ
2倍の人生を楽しむことができたからだ。
朝はいつものように
保育園や小学校へ通った。
しかし、昼を境にして
平日が休日に入れ替わった。
これが「半ドン」。
それは大人も同じで、
半ドンの我が家の昼食は、
父の作るサッポロラーメンが多かった。
日曜日の子どもたちは、
地域活動、家族で″お出かけ″と、
意外に自由な時間が少なかったように思う。
だから、土曜日の半ドンこそが
友達と長時間、
エネルギッシュに遊ぶことが可能な日だった。
今も、そんな昭和の生活を
懐かしく思い出す。
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かつての土曜日の心地よい記憶とともに、
悔しい思い出もある。
当時5才になったばかりの私は、
「太陽戦隊サンバルカン」を
流行に乗じて観ていた。
土曜日の夕方に放送されていた
子ども向けのテレビ番組である。
その日も、
日が暮れるまで外で存分に遊び、
満ち足りた気分で帰宅した。
友達と遊べただけでなく、
お気に入りの番組も見られる。
最高の流れになるはずだった。
しかし、
その日の「太陽戦隊サンバルカン」は
すでに放送を終えていた。
まだ、私は時計が読めなかった。
放送開始の目安にしていた夕暮れ時が
18時をすっかり超えており、
見逃したのだ。
私は一人、
やりきれない想いで家中を巡り、
地団太を踏んだ。
ほんの些細な一件だが、
まだ経験の浅い5才の私には
強烈な出来事となった。
この悔しさを何度も反芻する中で、
・叶わないことがあること
・時間は巻き戻せないこと
・夕暮れの時刻は変わること
を徐々に理解し、
教訓めいた学びにもなって記憶が定着した。
初夏の夕暮れ時になると思い出す。
半ドン、甘じょっぱい。